プロブロガーやフリーランスになるために、資格も認定も契約も一切不要です。「私はプロブロガーです」「フリーランスです」と言ってしまえば OK。あとはブログの自己紹介ページや名刺に肩書を書いておきましょう。
しかし、どのような手段でお金を稼ぐのであれ、世間から見れば個人事業主です。税金もきちんと納めなければなりません。
もし現在サラリーマンで、これから会社を辞めてプロブロガーになろうと思っているなら、準備しておくべき項目をざっとご紹介します。
Contents
会社員のうちに準備しておきたいもの
収入源となるブログ本体を作っておく
プロブロガーとして活動するなら、稼ぎのメインはブログです。
生活資金に余裕があれば、会社を辞めたあとにブログを立ち上げてもよいかもしれません。が、そのブログが必ず稼げるようになるとは限りません。
また、すぐに収益が発生するわけでもないので、安定した給料がもらえるうちにブログを作っておきましょう。
どのくらい稼げるようになれば独立できるのか、というのは個々の環境で変わります。というか、その答えがわからないうちに独立するのはちょっとオススメできません。
ブログを運営するために必要なお金(サーバー代や通信費)と生活資金を把握しておき、ブログをどのように発展させどのように収益を向上させていくのか計画を立てる必要があります。
どこかに提出するわけではありませんが、こうした事業計画のようなものを作ることで、今までの “適当な” お金の流れを改善できるというメリットもあります。お金の管理がしっかりできないと、どこかで破綻します。
ブログ初心者におすすめの収益化方法|マネタイズの仕組みを徹底解説
クレジットカードの申し込み
たいていは、ブログである程度稼げるようになってから独立を考えると思いますが、今すぐバーンと退職届をたたきつけて辞める前に財布の中を見てください。クレジットカード何枚入っていますか?
プロブロガーになるとクレジットカードは作れません。独立してから数年間安定した収入を確保できていたなら審査に通るかもしれませんが、独立直後は審査に通らない と思ってください。
これは、自営業・フリーランスの方が共通して直面する壁ですね。「毎月給与があるサラリーマンに比べると信用性が低い」のです。
フリーランスになる方は、信用がある会社員時代にカードを作っておくことが多いようです。クレジットカードだけではなく、銀行もサラ金も独立したばかりのフリーランスにお金を貸してくれません。
いざという時の準備は会社を辞める前にしておきましょう。
賃貸契約・ローンの手続き
見落としがちなのが、住居を変えるときの賃貸契約です。家を購入する場合はローンの手続きですね。
まあ、プロブロガーになってガンガン稼ぐから大丈夫だ! と家を買う人はいないと思いますが、会社を辞めるのを機に引越しをすることがあるかもしれません。社宅に住んでいる場合は必ず追い出されますし。
この賃貸契約も、自営業だと借りられないことがあります。契約時にクレジットカードの新規発行が条件となっている物件となると、前項のとおりほぼ審査に通りません。
賃貸物件の管理会社にとって、この先きちんと家賃を払ってもらえるかどうかが一番のポイント。安定した収入があるサラリーマンに比べると、フリーランスの審査は厳しくなるのです。
世間的に認知度の低いプロブロガーなら、なおのこと厳しいかもしれません。
引越しを考えているなら、会社に在籍しているうちに手続きしておくのがよいですね。
社会的信用はゼロから積み上げていく
事業を興したばかりのフリーランスは、社会的信用がゼロです。クレジットカードやローン、賃貸契約などの審査はまず通りません。これからゆっくり着実に実績を積み上げていきましょう。
その点、終身雇用制度が崩壊していつリストラされるかもしれないサラリーマンのほうが、社会的信用という視点で言えば上なわけです。
もっとも、サラリーマンでも在籍期間が短かったり、延滞ブラックになっているとカードは作れません。そこからプロブロガーになるのであれば、デビットカードなどを活用すると良いでしょう。
オンラインで決済するときはカードが 1 枚あったほうが便利ですし、できれば事業用決済専用のカードを分けておいたほうが管理しやすくなります。
会社を辞めた後の各種届出と手続き
会社を辞めた後は、あれこれ書類を提出して手続きしなければなりません。
会社を作るとなるとまたちょっと変わるのですが、たいていは個人事業主だと思うのでその手続き関係を見ていきましょう。
市町村役場で手続きするもの
まず、現在住んでいる地域の役所へ向かいます。
必要な書類や持参するもの、手続きの流れを事前に電話で確認してから行くと何度も足を運ばずに済みます。
役所で手続きするのは以下の 3 点です。
- 国民健康保険
- 国民年金
- 住民税(確認のみ)
国民健康保険
現在正社員として雇用されているなら、社会保険に加入していると思います。アルバイトでも労災保険には入っていますし、長時間働いていたなら雇用保険に加入しているはず。
社会保険とは
おもに健康保険、労災保険、雇用保険、厚生年金保険の 4 種類のこと。
このうち健康保険は会社が保険料の半分をもってくれていましたが、個人事業主は国民健康保険加入の手続きをして全額自分で支払うことになります。
当たり前ですが、ゆくゆく法人化を検討していて人を雇用するのであれば、その従業員の保険料を半分もたなければなりません。雇用人数にもよりますが、意外と額が大きくなる部分です。ひとりあたり年間 50 万円ぐらいですね。
会社を辞めて健康保険資格喪失証明書が発行されたら、すぐに役所へ行って手続きしましょう。
国民年金・国民年金基金
年金も厚生年金保険から国民年金保険へと切り替わります。健康保険と同時に手続きすることになるので、役所へ行くさいには年金手帳も忘れずに。
厚生年金と比べると、国民年金は受取額が減少します。生涯現役をつらぬく覚悟で独立する方もいますが、いつまでも健康体でいられる保障はどこにもありません。
そのため、支払額は多くなりますが国民年金基金への加入も検討したほうがよいかもしれません。
住民税
住民税に関してはとくに手続きをする必要がありません。今後の支払いに関して不明な場合は、健康保険や年金の手続きのついでに聞いておくとよいですね。
住民税
都道府県民税と市区町村民税を合わせたもの。「均等割」と「所得割」を合計した金額を納付する。
住民税は前年の年収をもとに計算され、あとから納付書が届くことになります。
今まで給料から天引きされていた場合(特別徴収)は、きちんと計算しておかないと納付額に腰を抜かすかも。
特別徴収の場合、会社を辞めた月によって以下のように変わります。
退職月 | 住民税の徴収 |
---|---|
1 ~ 5 月 | 5 月までの住民税を最後の給料から一括天引き |
6 ~ 12 月 | 退職月の住民税だけ天引き |
1 ~ 5 月に辞める場合でも、普通徴収に切り替えて自分で納付するなら一括天引きされません。どちらがよいか財布と相談して決めましょう。切り替えは会社で手続きしてくれます。
独立後は自宅に納付書が届き、一括または分割で納付することになります。
ここまでのまとめ
手続きの順番は役所によって変わると思いますが、「国民健康保険・国民年金」はセットで覚えておきましょう。
「国民健康保険料」と「住民税」は前年の年収をもとに計算されますが、「国民年金」は定額です(平成 27 年度は 15,590 円)。
いずれにせよ、今まで勤務先の会社が計算してかわりに納めてくれていたものを、今後は自分で納めるようになります。独立してプロブロガーになりたいなら、生活資金には余裕をもたせておきたいですね。
なお、地域によっては「個人事業開始申告書」を役所に提出する必要があります(東京 23 区は税務署のみで OK)。
税務署で手続きするもの
役所での手続きが終わったら、今度は「プロブロガー」として活動するための届出を行います。
個人事業の開業廃業届出書
開業届は、事業開始から 1 ヶ月以内に提出する必要があります。
税務署に行けば届出書はすぐにもらえますし、職員が書き方を丁寧に教えてくれます。必要なものは印鑑のみ。
ダウンロードして記入のうえ持参しても OK です。とくに難しいものではないのですぐ書けますし、わからない部分は空白にしておいて提出時に聞きましょう。
ダウンロード 個人事業の開業廃業届出書(PDF)
とくに決まっていないなら、「屋号」は空白でもかまいません。
所得税の青色申告承認申請書
青色申告承認申請書は、開業から 2 ヶ月以内に提出する必要があります。
何度も足を運ぶのは手間なので、開業届と一緒に提出しておきましょう。こちらも事前にダウンロードして持参できます。
ダウンロード 所得税の青色申告承認申請書(PDF)
ちなみに、開業届とこの申請書に記入する「業種」を何にするかによって「個人事業税」の税率が変わります。
人を雇う場合に必要な書類
プロブロガーとして誰かを雇用することがあるのかわかりませんが、個人事業主でも人を雇うなら手続きが必要となります。税務署に提出するのは以下の書類。
- 青色事業専従者給与に関する届出書
- 給与支払事務所等の開設等届出書
- 源泉所得税の納期特例の承認に関する届出書
このほか、労働基準監督署に労働保険関係の届出を、ハローワークに雇用保険の届出が必要となります。
その他に準備しておきたいもの
以上、必須となる手続き関連をご紹介してきました。
ここから先は任意ですが、独立前後に準備しておくと便利かなと思うものをご紹介していきます。
事業用口座の開設
兼業の場合もそうなんですが、プロブロガーとしての収支をまとめる銀行口座を作っておきましょう。
開業届けを出していれば「屋号+本名」の口座が作れますが、「屋号のみ」では作れません。
ちなみに、ゆうちょ銀行の振替口座なら「屋号のみ」の口座が作れます。ただし、通帳は発行されませんし、利息もつきません。
個人商店の屋号名で振替口座を開設できますか。 | よくあるご質問 | 株式会社ゆうちょ銀行
個人の口座と兼用するとあとで申告するときに苦労するので、早めに準備しておきたいですね。
会計ソフトの導入
個人事業の場合、事業年度が 1 月 1 日~ 12 月 31 日 となっています(年度の途中で事業を開始した場合は、開業日から 12 月 31 日まで)。
その 1 年間の収支をとりまとめて、2 月 16 日~ 3 月 15 日 に確定申告します。
現在はクラウド型の会計ソフトが人気で、下記がよく使われているようですね。
個人的に「マネーフォワードクラウド」がわかりやすくてオススメです。
請求書・領収書
請求書に関しては Excel ですぐに作ることもできますが、すぐに発行できるようあらかじめひな型を作成しておきましょう。
もちろん、市販の請求書や領収書を購入して手書きでもかまいません。そのさいは、購入時に連番を振っておくと管理が楽になります。
もっとも簡単なのが、印刷から送付までオンラインで完結するクラウド型。先の「MFクラウド確定申告」と連携できる「MFクラウド請求書」が便利です。
個人事業用の印鑑・横判
印鑑は屋号が入っていない個人名のものでかまいませんが、こちらも事業用として別に作っておくと便利です。
個人でもそうですが、印鑑は基本 3 種類です。
- 実印
- 銀行員
- 認印
「開業セット」で探せば 2 ~ 3 万円ほどで見つかります。
屋号・氏名・住所が入っている横判(ゴム印)もあると、市販の領収書などにいちいち手書きする手間が省けます。
小規模企業共済制度への加入
「小規模企業共済制度」というのは、いわば退職金の積み立てです。個人事業主でも加入できますが、プロブロガーでこの制度に加入している方がいるかはわかりません。
毎月の掛金が全額所得控除になるので、先のことを考えて検討する価値はあると思います。加入手続きは商工会や銀行で行います。
ブロガー名刺
オフラインで「プロブロガー」を名乗るなら名刺も用意しておきましょう。
プリンターがあるなら市販の名刺用紙で簡単に作れますし、業者に発注しても 1 枚 20 円もかからずに作れます。
ブロガーならブログ URL や SNS アカウントを入れておきたいですね。アイコンや顔写真・イラストも入れておくと、他のブログで紹介してもらえる機会が増えるかもしれません。
目の疲れを抑える PC 用めがね
プロブロガーの主な仕事道具は、PC もしくはスマホやタブレット。
ブログのスタイルにもよりますが、今後は 1 日の半分ちかくを PC の前で過ごすことになるかもしれません。そうなると一番ダメージを受けるのが「目」です。
つねに PC モニターやスマホの液晶を見るので、きちんとケアしてあげましょう。液晶の輝度を落とすだけでも目の負担を減らすことができます。
PC 用メガネ(ブルーライトカットグラス)を使うと、目の疲れがけっこう軽減できますよ。僕が使っているのはプロゲーマー用のゲーミンググラスです。
腰の負担を軽減するイス
もし自宅での執筆がメインとなるなら、専用の机とイスを用意したほうがブログに集中できるのでおすすめ。
目と同じかそれ以上に負担がかかるのは「腰」なので、机よりもイスにお金をかけたいところです。
個人的にはエルゴヒューマンプロが気に入っていますが、できれば実際に試してから購入したほうがよいと思います。PC 本体と同じくらいのお値段ですし。
健康診断
サラリーマンなら会社負担で年 1 回以上の定期健康診断があるはず(労働安全衛生法 第 66 条)ですが、プロブロガーとして独立したあとは自分でお金を払って健康診断を受ける必要があります。
病院によって違いますが、だいたい 1 万円ほどかかることに加え、個人事業主では必要経費と認められません。そのため、健康診断を受けている方は少ないかもしれませんね。
受ける・受けないは個人の自由ですが、フリーランスは身体が資本です。自分が倒れればすべての仕事はストップし、かわりにブログを更新してくれる人は誰もいません。
サラリーマン時代より健康管理に気を使うべき、ということです。
まとめ
以上、プロブロガーとして独立するために必要な手続きと準備しておきたいものをご紹介してきました。
独立はゴールではありません。スタートです。夢ではありません。現実です。スタートでつまづかないよう、しっかりと準備・計画をしておきましょう。
村上龍氏いわく「小説家(作家)は最後の手段」ですが、プロブロガーも似たようなものかもしれませんね。